最高裁判所第三小法廷 昭和39年(オ)640号 判決 1966年3月01日
上告人
佐世保宅建株式会社
右代表取締役
西村親信
上告人(参加人)
山口吉次
被上告人
田川増五郎
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人山口吉次の負担とする。
理由
上告人山口吉次の上告理由第一点について。
滞納処分(明治三〇年法律第二一号のいわゆる旧国税徴収法による。)の例による不動産の差押登記がされる以前に、すでに当該不動産の所有権移転請求権保全の仮登記が存する場合、右仮登記された請求権は、公売処分によつて当然に消滅することはないが、右仮登記よりも先順位で(抵当権設定登記と仮登記とが同日の受付にかかるときは、抵当権の登記の受理番号が先であれば、抵当権の登記が先順位となる。不動産登記法六条参照。)、該不動産上に公売処分当時有効に存在しかつ右処分によつて消滅すべき抵当権の設定登記が存するときは、仮登記は右抵当権に対抗できないので、公売処分によつて抵当権が消滅するかぎり、この抵当権に劣後する仮登記された所有権移転請求権も消滅するものと解すべきである。
これと同趣旨の所論原判示は、正当として是認すべく、論旨は、独自の法律的見解に立脚するものであつて、到底採用できない。
同第二点について。
本件滞納処分手続において、処分庁が仮登記権利者たる訴外川中潔に対して所論公売の通知をしなかつたからといつて、旧国税徴収法には仮登記権利者にかかる通知をすべき旨の規定がないから、右公売処分の違法をきたすものではないとした原審の法律判断は正当であり、原判決に所論違法はない(憲法二九条違反の主張は、違憲に名を藉りるにすぎず、その前提を欠くものである。)。
同第三点について。
所論は、原審がその裁量権の範囲内でした証拠申出の採否を非難し、または、原判決が適法に確定した事実と相容れない事実を前提として原判決を攻撃するにすぎないものであるから、いずれも採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(下村三郎 五鬼上堅磐 横田正俊 柏原語六 田中二郎)